第38章 継承
宇那手は、通常柱合会議が行われる庭で、産屋敷の立ち位置である、屋内に座していた。
集められたのは、竈門炭次郎、我妻善逸、嘴平伊之助。それから冨岡と、勝手に参加を決めた不死川と宇髄。柱の面々は、後輩達を怖がらせない様に離れた場所にいた。
「先に自己紹介しておきます。私は新たに柱に任命された宇那手火憐。煉獄様の跡を継ぎました。私は、異端とも呼べる存在。鬼の倒し方が、他の柱とは異なります。私の強味は、徹底的な情報戦略。過去に戦った異能の鬼や、隊士たちの経験を全て書き記しております。三人とも、鼓屋敷での戦いを覚えていますか?」
「はい」
炭次郎が、低頭し、答えた。彼はあの時かなり苦戦し、大怪我を負った。
「当時の貴方達の実力では、到底響凱には敵わなかったはず。奴は元十二鬼月でした。勝因の一つは、清君が、屋敷を操る鼓を奪った事。そして、もう一つは、炭次郎様の行動にあります」
宇那手は、かなり細かく戦いについて聞き取りを行なっていた。
「貴方は戦いの最中、床に散らばった原稿用紙を避けて着地したと言いましたよね?」
「はい! 足を滑らせると思ったので、咄嗟に」
「それが勝因です」
宇那手は言い切り、綴じ本をめくった。
「あの後、屋敷を調べました。響凱は人間だった頃、文筆家だったのです。ですが才能を評価されず、原稿を踏みにじられた。貴方は鬼殺隊員でありながら、彼が何よりも固執していた原稿を足蹴にしなかったのです。だから、動揺し、隙が生まれた。⋯⋯鬼殺隊としては異端でしょうが、私は鬼が人間だった頃の感情や、状況を察知する事に努めます。そこを突けば、必ず隙が生まれます。鬼舞辻も同じ。技や力だけでは無く、知恵も使って戦ってください」