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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第37章 理解


「私には⋯⋯勿体ない品です。どうして、誰も責めてくれないんですか! 優しさが苦しくて⋯⋯辛いのに! もっと罰っしてください!!」

 宇那手は胸を押さえて、蹲った。許容量を超える痛みと絶望を与えられた彼女が、生きる為に発した言葉だった。

 彼女の精神は、不安定なガラス玉の上に乗せられ、激しく揺らめいていた。

 冨岡は、再び彼女の首に手を伸ばし、掴んで押し倒した。少し開いた唇に、自分の唇を合わせ、舌を絡めてやると、彼女は次々と生理的な涙を溢した。

 苦しげな表情を見やり、冨岡は彼女を解放した。

「あと百九十八回だ」

「優し過ぎる」

 その言葉からも、宇那手がどんな仕打ちを受けたか感じ取れ、冨岡は歯を食いしばった。泣いてはならないと思った。一番辛いのは宇那手だ。

「今のお前からは目を離せない。死なれたら、俺が他の柱に殺される。傍にいる」

 冨岡は、宇那手の手に簪を押し付けた。

「それから手紙を預かった」

 彼は物凄い量の紙の束を差し出した。

 炭次郎、村田、浅井、藤原、胡蝶、不死川、甘露寺、伊黒、鱗滝、千寿郎。皆宇那手を案じていた。そして

「鉄地河原様?」

「最も腕の良い刀職人だ」

 冨岡はそう答え、手紙を覗き込んだ。なんと、鉄地河原自ら、宇那手の刀を打ちたいと申し出たのだ。彼は胡蝶や甘露寺の特殊な刀を打つ技能も持っており、評価が高い。

「私の刀は、鋼鐵塚さんに打っていただくとお約束しています」

 宇那手は、腕に舞い降りた鴉の首を撫でた。

「改めて、水炎柱の刀を、鋼鐵塚さんにお願いすると、お伝えください」

「物好きだな。折ったら殺されるぞ」

「折りませんよ。これまで、一本も折っていません。私は柱の誰より鬼の首を斬っていますが、折っていない。恐らく技量の問題です」

 宇那手は、鴉を空へ放つと、微笑みを浮かべた。

「私は腕力が弱いので、基本的に呼吸に頼って戦っています。首を斬る時には、人の何倍も集中力を使い、最も腕や刀に負荷の掛からない向きを計算して、斬撃を放っているんです。冨岡さんにも、教えましょうか? 代わりに持久力を鍛えて欲しいのですが」
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