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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第37章 理解


「お前⋯⋯いや、宇那手は、何故そこまで落ち着いている?」

 宇髄は、心から疑問に思い、これまで多くの人間が宇那手に訊ねた問いを繰り返した。時透の様に記憶障害を起こし、投げやりになっているわけでも無く、人を愛したり、案ずる事の出来る人間が、どうして此処まで完璧に振る舞えるのか、末恐ろしく感じられたのだ。

「生まれ付きの性格もあるかと。ですが、胡蝶様と同じ様に、地獄から這い上がって来たからです。両親が鬼になった時、私は自分で対処しました。泣いていても、蹲っていても、助からないと分かったから、戦った。常に頭を動かし、どうすれば犠牲を最小限に鬼を殺せるか、ずっと考えて生きて来たからです。宇髄様、お願いを聞いていただけますか?」

「ああ。なんでも派手に聞いてやる!」

「冨岡さんと仲良くしてあげてください。私は⋯⋯多分今回の件で幻滅されてしまいました。言葉が足りないだけで、とても優しい人なんです。助けてあげてください」

「⋯⋯分かった」

 なんでも聞くと言った手前、断れずに宇髄は了承した。すると、宇那手は初めて心の奥底から、花より美しい笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。嬉しいです」

 もし、嫁候補の中に彼女がいたら、宇髄は間違い無く選んでいた。鬼が彼女を喰わずに、弄んだ理由も何となく理解出来た。

 宇那手は、薔薇の様な美しさを持っていたのだ。鋭い刺を持ちながらも、繊細で、多くの人を惹きつける。

「本当に悪かった。無茶するなよ」

 宇髄は、宇那手の頭をくしゃくしゃと撫でて、立ち去った。

「⋯⋯近藤さん」

 宇那手は、姿を潜めていた女性隠を呼び寄せた。

「申し訳無いのですが、あまね様の許可を得て、花をお屋敷に生けていただけますか?」

「はい! 私の名前を⋯⋯」

「何度もお世話になっていますから。そうだ!」

 宇那手は懐紙を取り出し、差し出した。

「あまね様から、砂糖菓子を分けていただいたのです。貴女にも食べて貰いたかったので、残しておきました。お嫌いでなければどうぞ」

「ありがとうございます。なんてお優しい⋯⋯」

 近藤は、柱の中でも特に胡蝶を尊敬していたが、宇那手も同じくらい尊い存在だと思った。
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