第35章 後悔
「っ⋯⋯ああああ!!!」
宇那手は、窓を割りそうな悲痛な叫びを上げた。
「ごめんなさい⋯⋯ごめんなさい、義勇さん!!! 私⋯⋯貴方を裏切って⋯⋯。辛いです!! 苦しいです!! 気持ちが悪くて、死んでしまいたい!! 貴方に抱かれていると、全身に罪悪感が奔ります!! 毒の様に身体に染み込んで⋯⋯!! 刀を貸してください!! 首を斬って死にます!! 死んで償います!!! ごめんなさい!! ごめんなさい⋯⋯」
「⋯⋯罰を与えると言えば、気が済むか」
冨岡は、自身も胸の痛みに苦しみながら、言葉を絞り出した。
「どんな風に抱かれた? 何をされた? 後で全て話せ。同じ様に、同じだけ抱いてやる。堪えてみせろ。それで気が済むか?」
「⋯⋯っ」
宇那手は、ようやく静かになり、冨岡にしがみついて啜り泣いた。
「義勇、先程粗方話したが、鬼共がこの子に突き付けた条件は、恐らくお前が想像しているよりも苛烈な物だ」
産屋敷は身体を離し、正座し直した。
「童磨は、明け方まで、二百回交合に堪えられたら解放すると言ったらしい。恐らく、この子は、拷問に該当する仕打ちを受けている」
その言葉を聞き、あまねは衝撃のあまり口を覆い、吐きそうになった。冨岡は、宇那手を抱きしめる腕に力を込めた。
「火憐、話せるか? 何をされた?!」
「毒⋯⋯毒を飲まされ、身体が動かなかったのです。く⋯⋯首を締められ、血を啜られながら、何度も何度も⋯⋯。碌に抵抗も出来ず⋯⋯無理矢理酒も飲まされて⋯⋯何度か関節を外され──」
「やめてください!」
堪えきれずに、胡蝶が遮った。自分が同じ仕打ちを受けていたら、まず間違いなく廃人となっていただろう。
姉の殺され方を思い返しても、童磨が常軌を逸した行為を宇那手に強要した事は、容易に想像出来た。鬼舞辻の命令に従い、殺さなかっただけで、殺しに近い痛みを与えたはずだ。
「もうやめて! 思い出させないで! この子は、もうこれ以上傷付いてはいけない!! 罰を受ける必要もありません!! 十分傷付いているのに!!」