第35章 後悔
「火憐⋯⋯落ち着いて欲しい。何故こんな手段を使った?」
産屋敷の問いに、火憐はボロボロと涙を溢した。
「煉獄様を死なせてしまった!! 私は、上弦の鬼の動きも予見していたのに!! 私のせいです!! 制止を振り切り、私があの時に駆け付けていれば、猗窩座は殺せた!! 煉獄様を犬死にはさせなかった!!! 柱を死なせた、責任を取らなければなりませんでした!!!」
「それならば、真っ先に腹を切るべき人間は私だよ。君は私の判断に従っただけだ。こんな事は望んでいなかった⋯⋯」
産屋敷は宇那手の手を握った。
「すまないことをした。辛かっただろう。苦しかっただろう」
「許せなかった!!」
宇那手は身体を起こし、慟哭した。
「鬼舞辻は、煉獄様の命を取るに足りない物だと言った!! 鬼が人間に勝つのは当然だと!! 重傷を負った味方の猗窩座にさえ、労いの言葉も掛けず、制裁を加えた!!! だから迷いは捨てました。化け物が人間に勝つのが当然と言うのなら、化け物に近い人間なら鬼に勝てると!! 私は師範の愛を裏切り、心を鬼にした!! それでも、真の化け物には、心を折られるところでした!!! お二人とも手を離してください!!! 私は、汚れきった、醜い化け物です!!! もう人なんかじゃない!!! 愛される様な存在じゃないんです!!!」
「嫌だ」
冨岡は宇那手を抱きしめた。
「お前は怒りに駆られても、強さを求めて鬼になる道は選ばなかった! 人として戦い、傷付けられた!! 俺はお前よりも鬼が憎い。最後まで抗ったのだろう? 正気を保つために、どれほどの精神力が必要だったか⋯⋯。お前を責めるつもりは無い」
「でも⋯⋯私は⋯⋯鬼に身体を──」
「火憐」
産屋敷は、冨岡と宇那手を一緒に抱き寄せた。
「お前が醜い鬼だというのなら、どうして此処へ来てくれたのかい? 傷付いた身体で、真っ先に此処へ来て、私たちに有益な情報を与えてくれた。杏寿郎の為に怒ってくれた。酷い仕打ちを受けても、君の心は、私たちの物だ。帰って来てくれて、ありがとう。化け物なんかじゃない。深い傷を負わされた、人間の女の子だ」