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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第35章 後悔


 産屋敷にざっくりと、感情を排除し、事実を知らされた冨岡は、表情一つ変えずに、宇那手の寝顔を見詰めていた。

 胡蝶は、彼が宇那手と会う前の、無機質な状態に戻ってしまった事を察した。

 胡蝶は、宇那手の腕を手当てし、念のため、やや多量の藤の毒を飲ませた。万が一、子供が鬼の性質を持っていたとすれば、生まれてくる前に鼓動を止められる様に。

「単純な体力消耗なら、半日程度で目を覚ますかと思われます。ですが⋯⋯」

「や⋯⋯やめて⋯⋯もう」

 宇那手は譫言を繰り返していた。心的外傷により、覚醒が難しい状態にある事は、容易に考えられた。

「助けて⋯⋯痛い⋯⋯殺して⋯⋯」

「火憐」

 冨岡は宇那手の手を握った。目覚める様子は無かった。

 しかし、意識の深層で、宇那手は一つの答えを導き出していた。千切れそうな精神の糸を、自ら断ち切ってしまえば、童磨の思うツボだと。戦う為には、痛みも苦しみも感じなくなった方が有利だ。

 それでも、宇那手は人の心を失いたく無かった。例え目覚めた後に、深い絶望に支配されようとも、自分らしくいたかった。冨岡に詫びた上で、彼の怒りを受け止め、それを原動力に戦おうと決めていた。

「火憐の様子は?」

 あまねを伴って現れた産屋敷は、宇那手のすぐ側に座った。

 胡蝶は慌てて涙を拭い、低頭した。

「身体の方は問題ありません。後遺症も無いはずです。ですが、心が⋯⋯精神が覚醒を拒んでいます。当然です。こんな⋯⋯こんな酷い事を⋯⋯」

「火憐さん⋯⋯」

 あまねも、痛ましい表情で、宇那手の身体に手を置いた。

「どうして、こんな手段を⋯⋯」

「っ!! 童磨!!」

 宇那手は、身体に置かれた手の感触に反応し、目を開いた。怒り、悲しみ、闘志を剥き出しにして、彼女は師範の手を強く握った。

「っ⋯⋯火憐⋯⋯やめろ!」

 骨にひびが入りそうになり、冨岡は懸命に呼び掛けた。宇那手はすぐに周りの状況を把握し、力を抜いた。

「報告の続きを!」
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