第34章 糾弾
「お願い。私を宇髄様の元へ⋯⋯」
意を汲み、隠は宇髄の前まで宇那手を引き摺って行った。彼女は崩れる様に地面に倒れ、宇髄に視線を向けた。
「吉原には、十二鬼月が⋯⋯。上弦の陸は二体。二体で⋯⋯一体。奥様は無事です。お二人は認知されておらず⋯⋯お一人は、何らかの手段で逃れた様子。これまで⋯⋯お力添え出来ず、申し訳ございません。共に戦います」
「お前⋯⋯」
宇髄は絶句した。宇那手は、今にも気を失ってしまいそうだった。左腕の傷は、紛れも無く、噛まれた痕だった。
「火憐さん! 先ずは痛み止めを飲んで!」
胡蝶は大慌てで瓢箪を口元に近付けた。それを飲み干し、宇那手はようやく一息ついて、緩慢な動作で身体を起こした。
「お館様、到着が遅れ、申し訳──」
「しのぶ。火憐は話を出来る状態なのかな?」
産屋敷は、初めて隊士の言葉を遮った。胡蝶は宇那手の身体を支え、深呼吸した。
「火憐さん。どの様な状態ですか?」
「限界に近い疲労です。話は出来ます。痛みも引きました。この後暫く寝込むと思いますので、今、お話をしたいです」
宇那手の答えに、産屋敷は頷いた。
「火憐。この場にいる全員が、お前を柱として認めている。無限列車の件で、お前が正確な情報を鬼舞辻から引き出せる事も証明された。今回は、吉原の件を、何を対価にして聞き出したのかな?」
「対価については、師範⋯⋯冨岡さんに聞かれたくありません。後ほどお答えします。先に得た情報をお話してもよろしいでしょうか?」
「分かった。話しておくれ」
「煉獄様を殺したのは、上弦の参、猗窩座。鬼舞辻は、猗窩座が他の隊士を仕留め損ねた事に怒っておりました。猗窩座は逃げたのです。逃げなければ、日光に焼かれ、死んでいた。煉獄様は、そこまで追い詰めたのです。⋯⋯私を嬲ったのは、上弦の弐、童磨。歪んだ嗜好の持ち主。心がない。鬼舞辻以上の化物です。洋装の青年。人間に近い姿。人に紛れて暮らしている。武器は扇。虹色の瞳。頭から血を被った様な⋯⋯」