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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第31章 幻惑の鬼


「村田さん、声、聞こえますか? 私の声です」

 何時の間にか、宇那手が村田の傍に立ち、拾壱ノ型、凪を使用していた。次第に血の臭いが薄れ、僅かな目眩の後、村田は自分が森の中に立ち尽くしている事に気が付いた。

「この鬼は、貴方では斬れません。私がやります。今は拾壱ノ型で守っていますが、攻勢に転じれば、貴方は術に引き込まれるかもしれない。貴方の意識が、鬼の幻術の影響を強く受けている程、貴方は鬼の性質に近くなり、私の斬撃を食らってしまう。自分を保ってください」

「はい!」

 村田は改めて自分に言い聞かせた。血の繋がった家族はもういない。決して戻らない。何があっても。

 帰る場所をくれた、宇那手と冨岡を傷付ける様な真似だけは、絶対にしてはいけない。

「一瞬で片付けます。ですので、一瞬心を強く持ってください」

 宇那手はチラリと村田を確認し、すぐに走り出した。

 一瞬の内に、また村田の視界に、薄らと家族の姿が映ったが、彼はそれを打ち払った。新しい家族を思って。

 灰の臭いが漂った。日輪刀を収めた宇那手が、村田の元に戻って来た。

「終わりましたよ。少し、町の様子を見て行きましょう」

「その前に、貴女が殺す予定の鬼の頭の名前を答えてください」

 村田は、宇那手の喉元に刀を突き付けた。彼女は優しく微笑んだ。

「鬼舞辻無惨です」

 その言葉を聞き、ようやく村田は緊張から解き放たれて、刀を収め、その場にへたり込んでしまった。

「⋯⋯なんなんですか⋯⋯あの化け物」

「鬼ですよ。どうやら、私たちを喰うのは無理だと思った様で、最初から殺そうとしていました。⋯⋯まあ、少し肝が冷えました。貴方の目に、死者が映っていると分かって、ほっとしました。まだ生きている人間を殺すのは、難しいですからね」

「でも⋯⋯貴女は⋯⋯」

「あれが本当に師範なら、私の技を受け止められました。⋯⋯私の鬼舞辻への恨みは、より深くなった。師範を二度も、私に斬らせたのですから」

 宇那手は、村田を引っ張り上げると、川の音がする方へ目を向けた。ほったて小屋が幾つも並んでいる。夜だというのに、外に放り出されて泣いている子供もいた。
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