第28章 姉
「良かったわね。明日からは、自分で髪を結えるのよ? 身体を動かす時に、邪魔にならない様にするの」
宇那手は、本物の姉の様に振る舞っていた。彼女は簪を外し、それを藤原に見せた。
「私はこれ一つで髪を纏めている。髪の毛も戦いに利用しているの。相手の視界を遮るのに使える。生き残るためには、自分のありとあらゆる部位や、能力を使いなさい。藤の御守りは、ちゃんと持っている?」
「はい」
「よろしい。鱗滝様は、厳しいけれど、とても優しいお方です。指示に従い、訓練に励む様に。そろそろ夕食の用意をしたいんだけど、手伝ってくれるかしら?」
「はい! 今日のご飯は?」
「白米、大根のお味噌汁、アジの塩焼き、ほうれん草のおひたし。人数が多いから、まず女性の分を作ってしまいましょう」
やり取りだけを見ていれば、ありふれた姉妹に見える。姉妹⋯⋯。
(そうか⋯⋯。宇那手さんは⋯⋯)
冨岡にとって、姉の様に見えるのだろう。歳は冨岡の方が上のはずだが、宇那手は、かなり落ち着いており、しっかりしている。
どう考えても、冨岡は宇那手に甘え、依存しているのだ。一方で、姉以上の愛情を持って接しており、そのせいで関係が縺れている。
お互いが、お互いを想う故に、傷付け合っている。二人だけでは解決出来ないことだが、関係の浅い村田に、どうこう出来る問題では無いと思った。