第28章 姉
「そうです。そのことについても、考えています」
宇那手は胸に手を当てて俯いた。
「私は体を酷使し過ぎています。余命宣告をされました。私が予定通りに死んだとして、あの方はまだ二十八。柱として任務を全うすべき年齢です」
「待ってください! 貴女⋯⋯それじゃあ⋯⋯」
焦る村田に、宇那手は、ただ笑みを返した。
「気持ちの整理はついています。ただ、遺される者の痛みは、心から理解出来る。あの人が⋯⋯心を壊されないか、不安で⋯⋯」
「俺には無理です」
村田は悔しそうに断言した。
「俺と冨岡は、ただ同期だというだけで⋯⋯。貴女の様に一緒に戦う力量も無いですし、何より、冨岡が俺を必要としていない。あんな姿、初めて見ましたよ。人に甘えている姿なんて⋯⋯」
「⋯⋯私が馬鹿だったんです」
宇那手は、視線を逸らして一筋の涙を溢した。
「私が心の隙に入り込まなければ、あの方は独りで生きて行けたはずです。終わりの近い私の命は、あの方を苦しめるだけ。でも⋯⋯どうしても、お傍を離れられない! 私の我が儘です。私が⋯⋯出会わなければ⋯⋯」
「そんなことは、ありません!」
村田は怒りを込めて否定した。宇那手に、悲しい言葉を言わせる冨岡の不甲斐なさに、苛立ちがつのった。本来なら、余命宣告をされ、命の終わりに不安を感じている宇那手こそ、人の助けを必要としているはずだ。
「俺が冨岡と話をします。貴女は少し休んだ方が良いですよ!」
村田はそう言い、無断で部屋を飛び出していた。すぐ外に、冨岡が立っていた。話は、全て聞いていたのだろう。