第26章 特別稽古
「私はこれから、拾弐ノ型を使用します。どの様な方法でも構いません。防いでください」
宇那手の言葉に、全員がどよめいた。拾壱ノ型が冨岡独自の型だと言うことは、ある程度知れ渡っていたが、拾弐ノ型は、今のところそれほど日の目を見ていない。
「では参ります。水の呼吸、拾弐ノ型、凪、反転」
瞬間、間合いの外にいた全ての隊士に、細かな斬撃が次々と襲い掛かった。勿論宇那手は技の威力を最小に制御していたが、気配を察知出来なかった隊士は吹き飛ばされ、藤原をはじめとする、なんとか気配を察知出来た者も、全身に傷を負ってその場に膝を着いた。
辛うじて立っていられたのは、村田一人だけだった。
「流石です」
宇那手は村田に歩み寄り、彼の肩に手を置いた。
「貴方の稽古は私がつけます。この屋敷に留まる様に。任務の合間に此処へ戻り、訓練を受けてください。食事と寝床を提供します」
それから、彼女は技の気配を察知出来ても防ぎきれなかった者、そもそも技の気配を察知出来なかった者たちに歩み寄った。
「皆さん、屋敷の中で手当てを受けてください。その後、狭霧山へお連れします。元水柱の鱗滝様の元で二週間修行をする様に。その間任務は与えられません。五感を磨く訓練を受けるのです」
宇那手が縁側から屋内に入ると、彼女の前に列が出来た。
藤原は、酷く落ち込んだ様子で腕を見せた。
「⋯⋯駄目でした」
「一般の隊士が、気配すら察知出来ない中で、貴女は良くやりました。貴女は、次の最終選別直前まで、鱗滝様の指導を受けてください。私の師範も同じ修行を積みました」
宇那手は、丁寧にガーゼを貼り付けながら答えた。
次の隊士は、浅草で出会った男だ。彼も技の気配は察知していた。だからこそ、これまで生き残れたのだろう。
「お名前をお伺いしていませんでしたね」
「浅井と申します。あの時は、大変ご無礼を働きました。まさか、貴女が水柱の方と一緒に暮らしているとは、考えもしませんでした! お許しください!」
「無礼を働かれた記憶はありません。寧ろ貴方の情報は役に立ちました。ですが、あまりに未熟です。⋯⋯月彦は、鬼舞辻無惨です」
宇那手が声を落として伝えると、浅井は縮み上がった。
「そ⋯⋯それでは、あの日、貴女は⋯⋯」