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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第25章 予想外※


「貴方もベッドに入ってください。明日、隠に隊服を取りに行かせます。柱がそんな格好でウロウロするなんて!」

 胡蝶が説教すると、冨岡は胡乱な顔でベッドによじ登り、猫の様に丸まって寝息を立て始めてしまった。

「全く、手が掛かりますね」

 胡蝶は苦笑未満の表情で溜息を吐き、部屋を後にした。

────

「鱗滝様には、俺から手紙を送った。今日は諦めて休め」

 冨岡は、目覚めたばかりの宇那手の額に触れた。宇那手も、大人しく従わざるを得なかった。腹部の鈍い痛みのせいで、歩くこともままならなかったのだ。

「申し訳ございません。お館様にもお手紙を書かなくては」

「お前の体調を逐一知らせる様に命じられていた。何のことだか分からんが、一週間後に隊士を送ると仰っていた」

「何から何まで、ご迷惑をお掛けします。これでは、まるで、子供です。何も出来ない」

 宇那手は、萎れた花の様に打ちひしがれていた。冨岡は、彼女のベッドに腰を下ろして、言葉を探した。

「子供なら、こんな感情は抱かない。⋯⋯出来るなら⋯⋯また相手をしろ。俺はお前以外、抱く気は無い。俺の中に溜まっている物は、お前以外にはどうすることも出来ない」

「何度でも」

 宇那手は、顔を逸らして答えた。冨岡は微笑み、一瞬彼女の手を握り、すぐに離した。

「今夜は任務がある」

「私も行きます!!」

「駄目だ。人間を二、三人喰った程度の鬼だ。心配ない。⋯⋯ゆっくり休め。これまでの分も。この先、さらに過酷な戦いが待ち受けているのなら、今くらい休め」

「はい。⋯⋯師範。もう一度言わせてください。愛している、と」

「俺もだ」

 冨岡は、部屋を後にした。宇那手は気怠い身体を無理矢理起こし、豆だらけの両手を見た。

 ずっと戦って来たのだ。この先も戦って行くのだろう。

 昨夜の出来事は、生涯忘れないと思った。人並みの幸せなど諦めていた自分に、愛をくれた人がいたことを、死の瞬間まで覚えていたいと願った。
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