第25章 予想外※
冨岡は、全て片付け部屋に戻り、唖然とした。宇那手が布団に包まり、壁に身体を預けて呼吸を荒げている。
「おい」
冨岡が近寄ろうとすると、宇那手は手を伸ばしてそれを防いだ。
「放っておいてください!」
「俺のせいか? 今になって後悔──」
「っ!! 薬を飲み間違えたんです!! こんなこと、普段なら絶対しないのに!! 貴方のせいです!!」
宇那手は、堪えきれずに冨岡に縋り付いた。
「鎮痛薬を飲もうとしたのに、間違えて⋯⋯間違えて⋯⋯び⋯⋯媚薬を飲んでしまって⋯⋯」
「何故そんな物を?! 俺に飲ませるつもりだったのか?」
「違います⋯⋯。どうしても、怖くなってしまったら、自分で飲むつもりだったんです。⋯⋯どうしたら⋯⋯良いんでしょう?! 助けて⋯⋯」
彼女はお腹を抱えながら蹲った。
冨岡は、宇那手が冷静さを失っている分、非現実的な感覚に支配され、落ち着いていられた。
「お前がそんな薬を自分で調合したとは考えられん。欲するとも思えない。本当の事を言え。何のために、誰に渡された?」
「⋯⋯以前⋯⋯師範の御心が分からないと⋯⋯胡蝶様にお話した時⋯⋯。少量の使用で、師範の本音を聞き出せると言われ⋯⋯。ですが⋯⋯成分を調べて、使用するべきでは無いと⋯⋯。こんな物で得た愛に、意味など無いと思い⋯⋯」
「胡蝶なら、解毒剤を調合出来るのか?」
「駄目です!! わ⋯⋯私の身体の中にある、藤の毒と、どう作用するか分かりません!! 大概の薬は禁忌です!! 今まで服用した分を無駄にしてしまうかもしれません!! ⋯⋯大丈夫です! 独りにしてください!!」