第24章 結※
冨岡は、どうしたものかと悩みながら、風呂に入り、隊服ではなく浴衣に着替えて、宇那手のいる部屋へ入った。
「火憐、やはり今晩は──」
「少々お待ち下さい。お館様に文を書いておりますので」
彼女は落ち着いた声で答えた。今更ながら、冨岡は彼女の字がとても整っている事に気が付いた。
宇那手は、窓辺に止まっていた鴉の足に文を括り付け、空へ放った。
「⋯⋯鬼舞辻が下弦を動かす正確な日にちを知らせて来ました。鴉が、お館様へではなく、私へ知らせに来た事は、賢明です。この子は賢い。視界に干渉する類の血鬼術を使用していたのなら、鴉の目を通して、此方の場所は粗方割られた可能性がありす。ですが、産屋敷邸の場所を知られるわけには参りませんので、貴方の鴉をお借りしました。可哀想ですが、この子の視力を、痛みの無い毒で奪いました」
彼女は自分の鴉の首を撫でた。大人しく従っている様子を見るに、鴉の方も、納得しているのだろう。
「お待たせして、申し訳ございません。では、お約束通り、私を好きにしてください」
筆を置き、宇那手は布団の上に正座した。
冨岡は、溜息を溢し、彼女の両肩に手を置いた。
「まず、力を抜け。安心しろ。何日か掛けても良いと考えている。お前の身体では、すぐには俺を受け入れられないだろう」
「やはり、私が子供だから──」
「違う。お前が貞操を守り、遊びを知らないからだ」
冨岡は、宇那手の耳を口に含んだ。舌を這わせただけで、彼女は体を震わせた。
何処に触れても彼女は「感じる」事が出来る身体だ。通常の人間よりも、五感が優れているせいで。