第24章 結※
宇那手は、屋敷に戻ると、さっさと食事の用意をし、食べると、風呂に入って、そのまま布団に潜ってしまった。
「すみませんが、夕方まで寝ます」
「構わないが⋯⋯庭が広くなっている」
冨岡は、敷地が広げられた、何も無い庭を呆然と眺めた。宇那手は眠そうにしながら、少し笑った。
「私が所望したのです。現状、隊士になってから、稽古を受ける機会が無いので、望む者は、此処で見ようかと。明後日から、希望者が来るはずです。⋯⋯奥に部屋も増設していただきました」
宇那手は、そのまま、スーッと寝息を立て始めた。緊張の糸がようやく解れたのだ。
夕方になって目を覚ますと、宇那手は、目に見えて落ち着き無く、ソワソワしていた。
料理の皿を運ぶ手が震えているのを見て、とうとう冨岡は観念した。
「それほど恐ろしいのなら、無理をするな。絶対に必要な事では無い」
「⋯⋯いえ。怖いのではなくて⋯⋯不安なのです。貴方の期待に応えられるか⋯⋯私は何時も不安です」
「存在が期待以上だ」
冨岡らしい、素っ気ない言葉は、宇那手を少し落ち着かせた。
「師範は⋯⋯私の何処を気に入ったのですか? 師範の御心を疑っているわけではありません。ただ、言葉にして聞きたいのです。顔⋯⋯は、取り立てて優れていませんよね。私は、師範に不釣り合いなのでは⋯⋯」
「声、顔、眼光の強さ、振る舞い。全てが気に入っている。今震えているのも、男漁りをしていない証拠だ。食が細い割に、身体付きも悪くなかった。故に子供扱いする必要は無いと思った」
「⋯⋯っ!」
宇那手は、自分で聞いておいて、顔を真っ赤にして茶碗を見詰めた。出来るだけ冨岡と視線を合わせない様に⋯⋯彼女にしては珍しく、食事に意識を集中させて、食べ終えた。
彼女は無言で食器を片付け、早々に寝室に引きこもってしまった。