• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第23章 追憶の救済


「⋯⋯恨まないのか?」

 冨岡は目を伏せた。

「俺がお前を継子にしなければ、もっと長く生きられたかもしれない。平穏に、静かに暮らしていれば⋯⋯。俺ではなく、他の柱がお前を助けに行けば──」

「今よりずっと不幸でした」

 宇那手は膝を着き、冨岡の手の甲に額を押し付けた。

「こんなに人を好きにはなれなかったです。⋯⋯長生きします。絶対に。でも、もし、先にいなくなっても、気に病まないでください。ずっと傍にいますから。見えなくても、触れることが出来なくても、幸せを願っています。貴方を愛──」

「愛している」

 冨岡は、言葉を奪う様に重ねた。

「その言葉は、俺が貰って良い物では無い。お前に相応しい言葉だ」

「それでは、私の言葉の行き場が無くなってしまいます。どうか受け取ってください。私は、貴方以外にこの言葉を伝えられる存在のいない、虚しい人間です」

 宇那手は立ち上がり、隊服の埃を払った。懐中時計を取り出し、時刻を確認してから、小さく頷いた。

「今晩、私の時間を全て貴方に差し上げます。貴方が救った命です。好きにしてください。私も、それを望みます」

 彼女は、解体中の幕へ向かった。中から少女が飛び出して来て、抱き付いた。姉を慕う様に、当たり前の様に。

「帰りましょう、師範!!」

 宇那手は満面の笑みで手を振った。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp