• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第23章 追憶の救済


「さっき、吹っ飛ばされて、木に打ち付けられて、そのまま意識を失くしました」

「では、最後まで戦おうとしたのですね?」

「はい」

 少年の返事を聞き、宇那手は微笑んだ。

「そちらの子は、失格とします。つまり、次回以降、また最終選別に参加する権利があります。貴方は、失格にも、棄権にも該当しません」

 彼女は見習いが打った新品の刀を差し出した。

「貴方の刀が折れたのは、貴方が誰よりも鬼を斬ったから。気配で分かります。次の夜が最後。頑張れますね?」

「はい!!」

 獅子毛の少年は息を巻いた。宇那手は、彼をギュッと抱きしめた。

「鱗滝様が貴方の帰りを待っています。頑張って。諦めないで」

 宇那手は簪を拾い、気絶した少年を抱えて、茂みへと戻った。

「冨岡さん?」

 彼女は、静かに俯いている師範に声を掛けた。

 冨岡は、なんと言えば良いのか分からなかった。宇那手は、あの日の錆兎と自分の両方を救ってみせたのだ。そしてその頼もしい背中は、きっと、未来の隊士に大きな希望を与えた。

 信じたかった。自分の存在も、宇那手と同じ様に、階級が下の者の憧れや、希望、救いになっていると。

「感謝する」

 冨岡は、短く、そして重々しく礼を述べた。粗方、彼の過去を知っていた宇那手は、月の様に穏やかな笑みを向けた。

「はい。⋯⋯今晩は、もう大丈夫でしょう。明日も、残り一日となれば、踏ん張りがきくはず。この子だけが、気掛かりだったんです。絶対に死なせたくは無かったので」

 彼女は東の空を見上げ、目を細めた。

「戻りましょうか」

「ああ」

 二人は、共に山頂を目指した。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp