第23章 追憶の救済
案の定、三日目には、より多くの離脱者が出た。冨岡が北回り、宇那手が南回りで巡回し、棄権者の救助を行った。
現場の指揮は、全て宇那手に一任されていた。冨岡もそれを望み、彼女の判断に従った。
「伝令。三日目。棄権者八名、死亡者三名」
残り十二名だ。此処まで生き残れた者は、ある程度の実力者だ。後は持久力、精神力の問題。少なくとも鱗滝の元で修行を積んだ者なら、体力はあるはず。
四日目は棄権者が出なかった。
「伝令。四日目。死亡者六名」
六名は、助けを呼ばなかった。最期まで、毅然と戦い、死んだ。彼らを喰った分、鬼は力をつけている。
宇那手は恐れていたが、五日目は、棄権者も、死亡者も出なかった。
六日目。
「では、何時もの様に」
宇那手は、一瞬冨岡と視線を交わし、山の中へ駆け出した。
走って回っているうちに、食い散らかされた子供の遺体も発見した。彼女は犠牲者の所有物⋯⋯ハンカチや、髪飾りなど、可能な限り持ち出した。せめてそれだけは、還してやりたかった。
開けた場所に出ると、木下に、狐の面が落ちている事に気が付いた。
宇那手は歩み寄り、それを拾い上げた。額に模様が付けられている。真っ二つに割れていた。恐らく炭次郎の物だ。彼は此処で、最も力を付けた、異能の鬼を倒したのだ。
一方冨岡は、ゆっくりと歩みを進めていた。誰が、自分の歩いている場所を、先に通り過ぎた痕跡がある。鬼の気配も残っていた。誰よりも多く、鬼を斬っている者が、この先にいる。
「⋯⋯っ」
彼は歩みを止めた。少年が⋯⋯獅子毛の少年が、気を失った黒髪の少年を庇い、戦っていた。かなり消耗している。
冨岡は、動けなかった。かつての自分が其処にいた。弱く、守られるだけの存在。そして、誰よりも強かった大切な親友。
鈴の音がした。異能の鬼だ。生前は僧侶だったのだろう。三度笠を被り、ある程度の知能を持っている。
「祐司、目を覚ませ! 起きろ!!」
獅子毛の少年は必死に叫んだ。