第22章 最終選別※
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幕の外では、隠が身の振り方について激しく言い争っていた。
「助けるべき?! 悲鳴を上げてるわよ?!」
「だが、柱だぞ!」
「でも、女性の方は甲で、お館様のご友人よ?!」
「柱とお館様のご友人じゃ、どっちの身分が高いの?!」
「知るかよ!! 宇那手様の待遇自体、異例中の異例なんだぞ!!」
「だけど宇那手様の実力は柱に匹敵するって⋯⋯」
「それじゃあ、嫌なら本気で抵抗するだろう?!」
「でもあの方は継子です! 師範に逆らうなんて出来ないんじゃ⋯⋯」
「身分どうこうよりも、考えろ! 男が無理矢理女を押さえ付けている! それが正当な行動と言えるか?!」
「うるさい」
幕の中から、疲れた様子の冨岡が姿を現した。彼はきっちり隊服を着ており、衣服の乱れは一切無かった。
「宇那手は眠った。騒ぐな」
「っ!!」
一番、宇那手の身を案じていた女性が幕に駆けこんだ。彼女は、蝶屋敷と、産屋敷邸で、二度宇那手と接触していた。不死川の身を案じる、優しい心に触れていた。
「⋯⋯宇那手様」
彼女は、ほっと胸を撫で下ろした。宇那手は、茣蓙の上に横たえられ、寝息を立てていた。
(泣いて⋯⋯いらっしゃる?)
隠がそっと涙を拭うと、宇那手は小さく口を開いた。
「義⋯⋯勇⋯⋯さん」
柱を名前で呼んだ事に驚いた。と、同時に、宇那手と冨岡の間には特別な感情がある事を理解した。
「心配いりません。何も無かった様です」
彼女は、不安げな仲間にそう伝え、宇那手に布団を掛けてやった。