第22章 最終選別※
「分かっている、愚か者。逆に聞くが、何をされると思った?」
冨岡の問いに、宇那手は真っ赤になった。冨岡は、珍しく僅かに微笑んだ。
「俺が何をしたいのかは、理解している様だな。⋯⋯抱いてやるから、眠れ。言葉通りに、抱くだけだ。何もしない」
「それで良いのですか?」
宇那手は、恐怖心を呼び覚まされた腹いせに、師範の顔を真っ直ぐ見詰めた。
「何もせずに、満足ですか? 痣に触れただけで? 鬼舞辻と同じ様に?」
「⋯⋯よせ。手が出る」
「手だけなら、構いませんが」
宇那手は、自分から冨岡の唇に触れた。
「どうして胸なんかに口付けをしたのですか? 普通唇では?」
「黙れ!」
冨岡は宇那手の頭を抱き寄せ、唇に噛み付く様な口付けをした。彼女が逃れられない様に、腰に手を回し、自分の方へと引き寄せた。
「んっ! ⋯⋯っ!」
宇那手の身体が、ビクビクと反応を示した。元々彼女が敏感な事には、気付いていた。五感が並の人間より優れているのだから、当然だ。だから、口付けさえ、出来なかったのだ。
「っ⋯⋯ん⋯⋯!」
宇那手は、一瞬息継ぎの間を与えられ、またすぐに口を塞がれた。本来触れ合うはずの無い舌に、口内を蹂躙され、燃える様に身体が熱くなって行った。対して、意識は強い鎮静剤を打たれた時の様に、闇に沈みそうになる。鼓動は早まっているのに、身体は無意識に震えているのに、意識を失いそうになった。
その感覚は、不思議と心地良くて、宇那手は全てを委ねてみることにした。瞬間、全身が大きく痙攣し、脱力してしまった。一瞬だけ視界が真っ白になったが、意識を失うことは無かった。
「冨岡⋯⋯さん⋯⋯。私⋯⋯」
「力が抜けたのなら、そのまま眠れ」
とても優しい声だった。宇那手は素直に目を閉じた。