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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第22章 最終選別※


「優しく⋯⋯」

 冨岡はどうして良いのか分からず、宇那手の痣に手を当てた。

 瞬間、彼女は表情を引きつらせた。瞳孔が僅かに小さくなり、何かに激しく怯えている様に見えた。

「やはり、触れられると違和感があるのか?」

「ち⋯⋯がう⋯⋯」

 宇那手は、両手で冨岡の手を握った。恐ろしい記憶が蘇るのだ。

「ごめん⋯⋯なさい⋯⋯。鬼舞辻が⋯⋯鬼舞辻が、こうやって⋯⋯私に触れた⋯⋯から⋯⋯。殺される⋯⋯鬼にされる⋯⋯と」

「鬼舞辻」

 冨岡は怒りに駆られた。まさか、鬼舞辻が宇那手の肌に触れているとは、思わなかった。それ程の危険を、彼女が冒していたとは、想像もしなかった。距離を取り、会話をした程度だと考えていたのだ。

「俺の顔を見ろ。それでも怖いか?」

「嫌!! やめて!!!」

 宇那手は、堪えきれずに冨岡を振り払っていた。弱い人間がそうする様に、自分で自分の体を抱きしめ、這う様に距離を取った。

「やめて!! お願い!! 触らないで──」

「言ったはずだ。弱者の意見など、尊重しないと」

 冨岡は構わず宇那手を強く抱きしめた。

「本気で止めて欲しいのなら、俺を殺せ。分かっているはずだ。俺は鬼舞辻では無い。この一年、ずっと傍にいた。それをたった数分の出来事で⋯⋯」

 彼は宇那手の首を片手で掴んだ。

「その気になれば、俺もお前の首を折れる。殺せる。だが、そんな真似はしない。目を開けろ。俺を見ろ」

「⋯⋯師範」

 宇那手は、望んでいたはずだった。何時か冨岡が、自分と同じ感情を持ち、「愛している」と言ってくれる事を。家族以上の親愛を込めて接してくれる事を。

 自分に向けられた眼差しは、あの最初の夜と同じ。痛みや絶望を抱いた人間に、戦う覚悟を与える、鋭く、厳しく、優しい目。

「⋯⋯ありがとうございます」

 宇那手は、冨岡の背に腕を回した。

「大丈夫です。貴方なら⋯⋯大丈夫。ですが任務中ですので」
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