第22章 最終選別※
冨岡が始発地点に戻ると、隠は気を失うほど驚愕した。
「冨岡様?! 何故貴方がこちらに?!」
「お館様のご命令だ。宇那手は、あの方にとっても大切な存在。俺よりも能力は高いが、病み上がりだ。⋯⋯棄権者二名だ。女の方は怪我をしている」
「かしこまりました! こちらでお預かりします! 処遇については、宇那手様の裁量に任せると伺っておりますが、どうすれば良いでしょう?」
「その指示に従え」
冨岡は、子供を引き渡すと、幕の外へ座り込んだ。夜明けを強く願った。
東の空が白み始めるのと同時に、宇那手が姿を現した。三人の子供を連れている。内一人は女の子で、袴はボロボロになっていた。
「宇那手様!」
駆け寄った隠に、宇那手は子供を引き渡した。
「伝令。二日目。棄権者五名⋯⋯死亡者三名」
これで、約三分の一が脱落した。恐らく、今晩も残りの半数が戦線離脱するだろう。
「⋯⋯師範」
宇那手は、冨岡の姿を見つけ、駆け寄った。
「鍛錬は?」
「出来ることは済ませた」
彼は宇那手に手を伸ばしたが、宇那手はそれを振り払った。
「任務の途中です。触らないでください」
彼女は幕の中へ入り、救出した者たちを見回した。
「家族がいる者、今後鬼とは関わりたく無い者は、山を出なさい。帰ってよろしい」
少年たちは、もう一秒たりとも此処にはいたくないといった風に、外へ飛び出して行った。
少女たちは残った。二人とも怪我をしていたし、家族や親戚を亡くしている。余程の財でも無い限り、その歳で、女が一人で生きて行くことは難しいだろう。特に田舎では、仕事も見つからない。
片方は、恐怖に縮み上がり、口も聞けない様子だったが、先に助けた少女は、次々と涙を溢していた。
「私⋯⋯決めたのに⋯⋯。出来るだけ沢山⋯⋯鬼を殺すって⋯⋯決めたのに⋯⋯」
「鬼を殺す人の手助けは出来ます。⋯⋯すみませんが、この二人は、蝶屋敷へお連れしてください。胡蝶様とは、既に協議済みです。治療と、温かい家庭を必要としています」
「かしこまりました」
隠二名は、少女達を抱えて外へ出て行った。