第22章 最終選別※
宇那手は、やはり一瞬で鬼の首を落とし、少女に手を伸ばした。
「立てる?」
「⋯⋯う⋯⋯はい⋯⋯」
彼女は這う様にして出て来た。足を捻ったらしく、走るのは無理そうだ。
「貴女は棄権とします。これ以上、戦えない」
彼女を背負った所で、また鴉が現れた。
「南東!! 白ノ羽織!! 風ノ呼吸ノ青年!!」
「間に合わない⋯⋯」
宇那手は奥歯を食いしばった。二人の子供を連れて行くのは無理だ。かといって、二人で取り残すことも出来ない。力量で言えば少女の方が上だが、怪我をしていてまともに動けない。少年は、少女を見捨てるだろう。
「宇那手」
藪の中から現れた姿に、宇那手は息を呑んだ。
「どうして⋯⋯貴方が此処に?」
「その子供を渡せ。後は任せろ」
冨岡は、半ば無理矢理二人の子供を奪い取った。考えている時間は無い。宇那手は、視認出来ぬほどの速さでその場を発った。
「おい、お前ら」
冨岡は子供を睨み付けた。
「二度と鬼に関わるな」
「か⋯⋯関わりたくて関わったんじゃねぇよ!」
冨岡の立場を知らぬ少年は、怒鳴り返した。
「向こうが勝手に来やがったんだ!! 頼んでもいねえのに、人の家にズカズカと!!」
「戯け者」
冨岡は、相手が子供であろうと容赦しなかった。
「鬼がお前の意思など尊重するものか。奴らは俺たちを食料としか見ていない。お前が鹿の肉を食らうように、平然と、当たり前に。⋯⋯宇那手は⋯⋯さっきの女は目の前で両親を鬼にされたが、情け容赦なく斬り捨て、生き残った。並の鬼ならあいつの気配を察知して逃げ出すだろう。そのくらいの気概が無ければ、生き残れない」
少年は悔しげに黙った。対して少女は、冨岡の腕の中で涙を流していた。
彼女からは、激しい後悔と、怒りの気配が感じられた。幼い彼女は、それでも少年より分別があった。
恐らく根性もあり、年齢に対して身体能力も優れている。しかし、技術が追い付いていなかったのだ。この状態で、最終選別への参加を許した育手の問題だ。