第22章 最終選別※
「困りました⋯⋯。胡蝶様に事情を聞くしか無さそうです」
宇那手は、額に手を当て、その場にごろんと横になった。
「今は寝ます。今日明日が山でしょう」
彼女は殆ど気絶する様に眠ってしまった。隠は大慌てで、彼女に布団を掛けた。
宇那手は、誰に起こされるまでもなく、日暮れの一時間前に目を覚ました。
隠に強制的に食事を摂らされ、環と分けたことで、おにぎりは残り四つになった。
他の選別参加者は、それぞれ少量持ち寄った物を口にしているはず。環は食料を何も持って来てはいなかった。
夕暮れ時、宇那手は山の中に入った。今晩は、昨日よりも更に東へ進み、待機した。
最初に、助けを呼ばれたのは丁度深夜。
「北東! 三人組ノ少年! 内一人ハ鬼化」
「分かった」
(共闘していたのか⋯⋯)
宇那手は、少し感心して駆け出した。音と匂いを辿ると、一人が袋小路を逃げ惑い、一人が刀を構えていた。
「お前も、戦え!!!」
「う⋯⋯うるせえ! お前が⋯⋯お前が一緒に行動するって言ったから、こんな目に!! 鬼が増えたじゃねえか!!」
戦おうとしない姿に呆れ、覚悟を決めたのか、少年は一人きりで二体の鬼と向き合った。
(大丈夫だな)
彼は全集中の呼吸を完全に身に付けていた。怯えてはいたが、なんとか二体の首を斬り落とした。
それを見計らって、宇那手は茂みから姿を現した。
「此処からは、貴方一人で行きなさい」
戦っていた少年に声を掛けてから、逃げ惑っていた少年の腕を掴んだ。
「鴉を使ったのはお前だな? この権利を使用出来るのは一度きり。棄権で良い?」
「もう沢山だ!! あんな化け物になるくらいなら、貧乏の方が良い!!」
「まともな考えね。私が守るから安心──」
「北北西!! 黄色ノ羽織ノ少女! 雷の呼吸!!」
「分かった。⋯⋯少年、私と同じ速度で走るか、一人で始発地点へ戻るかすぐ決めて」
「走ります!!」
「そう。じゃあ、肩の関節が外れたからって喚かないで」
宇那手は、少年の腕を馬鹿力で引っ張り、駆け出した。彼が惨めに泣き喚くせいで何体か鬼を引き寄せ、斬る羽目になった。
少女は、木の狭いウロの中に逃げ込むことで時間を稼いでいた。日輪刀は離れた場所に落ちている。完全に戦意喪失していた。