第3章 小さな根城
今更ながら、洗濯も宇那手が行っていたことを思い出したのだ。隊服はともかく、ふんどしまで。胡蝶に聞かれたら、毒を盛られそうだ。嫁ぎ先も決まっていない若い娘に、家族以外の下着を洗濯させたなど。宇那手は、下女ではなく、継子なのだ。厚遇されるべき存在に、そんなことをさせていたと知られたら、他の柱にも、なんと言われるか。
本当に嫌われるかもしれない。
いや、数名には、本当に嫌われているのだか、冨岡はそのことに気付いていなかった。
湯当たり気味の冨岡が湯船を出ると、洗濯籠には、キチンと畳まれた隊服とふんどし、羽織が置かれていた。しかし、宇那手の気配が無い。
冨岡は慌てて着替え、居間へ行くと、茶舞台の上に書き置きが残されていた。
──蝶屋敷へ行ってきます。