第22章 最終選別※
「お館様に伝令をお願いします。初日、棄権者、死亡者無し。失格者一名。花の呼吸の育手の身元を探る様に意見を」
「承知仕りました」
宇那手より、遥かに年上の男性が、深く頭を下げて出て行った。
その様子を見ていた環は目を見張った。
「あの⋯⋯このお姉さんは誰? はしら⋯⋯というもの?」
「馬鹿! お前知らなかったのか?!」
「やめてください!」
怒鳴り声を上げた隊士を、宇那手は叱り付けた。
「過去に恐怖で支配した為政者達が、どの様な末路を辿ったか、ご存知ありませんか? 恐れを抱かせ、従わせるのは、鬼舞辻のやり方です。他の柱がどうであれ、私は共に戦う人間を対等な存在として扱います。勿論貴方も」
「申し訳ございません」
隊士は、深々と頭を下げた。宇那手は、苦い思いで口を開いた。どんな言葉を言おうとも、自身に与えられた地位は絶対的な物で、並の隊士を萎縮させる。
「顔を上げてください。この子は何も知らないのです。自分が稀血であることも知らされず、何の対策も為されずに此処へ送り出されました。柱や私の立場、稀血がなんであるかを教えてあげてください。私は夜まで休みます」
「かしこまりました。⋯⋯娘、こっちへ来い」
隊士はやはり命令口調で環に言った。環は悔しそうに、けれどそれを受け入れた。覚悟を決めた者の目をしていた。
環が別の幕へ連れて行かれてから、宇那手は深く息を吐いた。
「初日に、死亡者、棄権者が出なかったのは、あの子のおかげです。一人で十二体もの鬼を殺しています。今夜は、棄権者が大勢出るでしょう。死亡者も。⋯⋯怪我人をよろしくお願い致します」
「はい!」
隠は一斉に頭を下げた。宇那手は周囲を見回した。
「この中に、胡蝶様のお屋敷に仕えていた方はいませんか?」
「私は、かなりの間、伝令役を務めておりました!」
かなり年上の女性が手を挙げた。
「尤も、私がお仕えしていたのは、胡蝶カナエ様です。先代の花柱です」
「花の呼吸の使い手は少ないと聞きます。カナエ様は、何方に師事していたのでしょう?」
「申し訳ございませんが、柱に任命される前のことは、良く存じません」