第21章 仮面
鋼鐵塚は、改めて宇那手に向き直り、新しい刀を布から取り出した。
「これを打つ事は、俺の生涯において、最も名誉な仕事だった! まさか甲の刀を打てるとは!! しかもお館様の特注品!! 俺を指名した事には、深く感謝する!! さあ、抜いてみろ!!!」
彼の喧しさと来たら、善逸が可愛く見える度合いの物だった。産屋敷邸で此処まで大騒ぎをしたのも、炭次郎と鋼鐵塚だけだろう。
宇那手は大人しく刀を抜いた。
「っ!」
刀身には、厄除鬼滅の文字が刻まれていた。柱の文字とは異なるが、特別な物である事に変わりは無い。
刀身はゆっくりと色を変えて行った。以前の物とは大きく異なり、表は青色、裏は炎の色に染まった。
これは、元々炎の呼吸の適性があった宇那手が、水の呼吸を完全に極めた証拠となった。水の特性が、炎を上回ったのだ。
「なんと!!! なんという美しさ!!!! なんという名誉!!!!」
「名誉に思っているのは、こちらです。この様な物をくださって、ありがとうございます。大切に扱います」
宇那手が丁寧に礼を伝えると、鋼鐵塚は、やや大人しい声で問い掛けた。
「お前は何匹の鬼を殺した?」
「下弦の十二鬼月を二体、その他の鬼は六十八体以上。それ以上は、数えるのが面倒に──」
「やはりあのクソガキのせいだっー!!!! あいつが弱かったから、俺の刀が折れた!!!! 全部アイツのせいだぁぁぁぁ!!!!! 殺してやる!!!!」
恐らく鋼鐵塚が言っているのは、炭次郎のことだと、宇那手は察した。
「心中お察しいたしますが、刀を折ったのは炭次郎様ですので、私に怒りを向けられても困ります。まあ、冨岡さんは同じ敵を相手にして、刀を折りませんでしたから、確かに力量の問題でしょう。刀の質に問題は無かったかと。私の物も、三年間無事ですし。ただ」
彼女は怒鳴られることを承知で、事実を告げる事にした。
「鬼舞辻を斬ろうとすれば、私も刀を折ってしまうかもしれません。柱の方々も。その点はお許しください」