第21章 仮面
ドス黒い腹の内を見せた宇那手に、胡蝶は冷や汗をかいた。自分も大概良い性格をしているが、宇那手は、更にその上を行っている。
「鬼は虚しい生き物です。望んでそうなったわけでは無い者には同情します。衝動で人を喰ってしまった者にも。ですが、鬼舞辻だけは、許せない!! 何千回でも殺してやります!! 詫びの言葉は、死んでから言いに来いと言ってやるつもりです!! 例え自ら敗北を認め、首を差し出して来たとしても、出来るだけ高威力の技で殺してやる!! 魂さえも、粉々にしてやる!! 私の寿命を奪った恨みを思い知らせてやります!! 反吐が出る!!」
彼女の口の悪さに、胡蝶は後ずさった。宇那手は溜まっていた膿みを吐き出す様に、胡蝶の襟首を掴んだ。
「私はあいつに頭を下げたんですよ?! あの鬼舞辻に!! 親を殺した張本人に礼節を尽くした!!! 絶っ対に!!!! 殺してやる!!!!!」
「気持ちは分かります」
胡蝶も、仮面を拭い去り、応じた。
「私もあいつに言ってやりたい。いや、私は全ての鬼に言ってやりたい。さっさと、くたばれってね。まあ、剥き出しの殺意を見せていると、周りが引くから、大人しくしているけれど、私の中身も幼稚で、短気。鬼に対して、死ねとしか思えない。貴女と同じよ」
彼女の本音を聞き、宇那手は、冷静さを取り戻した。胡蝶を解放し、膝を着いて頭を下げた。
「ご無礼をお許しください」
「許しません。謝罪の必要が無いので。⋯⋯貴女の仮面の精度を見せ付けられました。鬼舞辻ですら、見破る事が出来なかった。鬼殺隊に必要不可欠な武器です。大切にしてください」
胡蝶は、両頬をパチンと叩き、柔和な笑みを浮かべた。
「この仮面は、姉に貰ったんです。私の笑顔が好きだと言ってくれた姉のために⋯⋯鬼を哀れんでいた姉の意思を引き継ぐために。けれど、私はウッカリ、ボロを出してしまいます」