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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第20章 信頼


「最低な人です」

 宇那手は、俯いた。自分に対して優しさを向け、迷い、苦しんでいる冨岡には、刃物を突き付けた方が救いになると判断した。

「私を殺す重責を他者に押し付け、自分は死んで逃げると? 腹を切る程度では、責任を取ったとは言えません。私を殺せないのなら、代わりに全ての鬼を殺してから死ね、とお伝えください。私が死んだ後、師範が役割を果たさずに極楽の入り口へ来たら、蹴り出してやります」

「全く。どうやったら、君の様に、強くあれるのだろうね。私は制御統一を第一優先と考え、子供たちを強く叱る事すら出来ないというのに」

 産屋敷は、宇那手の頭を撫でながら溢した。宇那手は、その手を取り、まるで弟を宥める様に言葉を紡ぐ。

「人には其々、背負うべき役割があります。お館様が優しく、万人から尊敬される存在でいる代わりに、私は人の恨みを買ってでも、叱咤激励します。出来ない事を見詰めすぎて、どうかお身体を悪くされません様に。その手の事は、全て私が引き受けます」

 言い終えてから、宇那手は柔和な表情に戻った。

「そういえば、お伝えし忘れていました。浅草でお助けした隊士なのですが、甲の位を持つ者として、月彦との接近禁止令を出しました。どうやら、浅草出身者だった様で、鬼舞辻が成り済ましている、月彦という人物について、かなりの情報を持っていました。鬼とは見抜けず、随分好意的な感情を抱いていましたので、警告はしました。あの近辺での任務は危険かと。あの隊士は、何年前の合格者ですか?」

「五年以上の中堅だね。生き延びて来たのだから、そこそこの力はあるけれど、異能の鬼に苦戦する様では⋯⋯。やはり一般隊士の質を上げるには、組織の在り方自体を変えなければならない。中核にいる私には、どうしても見えない部分が多い。また今度、君の知恵を借りたい」

「はい。私にも考えがありますので、また後日」

 宇那手が、きちんと礼をすると、産屋敷は立ち上がった。

「小芭内、実弥。この子を少し休ませてあげて欲しい。また、私のために頭を使わせてしまったからね」

「御意」

 二人は同時に頭を下げて、部屋を出て行った。産屋敷は、再度宇那手に顔を向けた。

「悩んでいたのは事実だけれど、少しわざとらしかったかな?」
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