第20章 信頼
「⋯⋯では、洋食を食べてみないかい?」
心中を察してか、産屋敷はそう提案した。
「蜜璃が好んで食べているのだけれど、栄養価が高く、少量でも体力を付ける事が出来る」
「はい。試させてください! 戦うために、力を付けなければ⋯⋯」
宇那手は拳を握りしめた。
産屋敷は、彼女が生きるためではなく、戦うために、と言った事が悲しく思えた。普通、人は生きるために戦うのだ。しかし、彼女は、生きる目的を、戦いに見出している。
「もう少し、休んでいておくれ。あまねが用意をするからね。⋯⋯それから、実弥が君を心配していた。暫く傍を離れようとしなかったから、また訪ねて来たら、声を聞かせてあげて欲しい」
「かしこまりました。ご配慮ありがとうございます」
宇那手は素直に答え、体を横にした。一刻も早く回復する事を望んでいたし、その点に於いては周囲にも望まれていると感じ取れた。
半刻程経った時、障子が空いた。不死川と伊黒が様子を見に来たのだ。
「不死川様⋯⋯。伊黒様も、ありがとうございます」
「テメェ、何をやりやがった!」
不死川は、少し掠れた声で宇那手の顔を覗き込んだ。
「話を繋ぎ合わせるに、煉獄との稽古で血を吐いた翌日に、浅草へ行って鬼舞辻から情報を引き出して来たってことか?!」
「はい、そうです」
宇那手は頷いた。怒鳴られるかと思ったが、不死川は、何も言って来なかった。宇那手の行動は、鬼を滅する上で、非常に重要な物であり、おいそれと否定出来なかったのだ。
鬼舞辻本人と取引をして、生きて帰れる人間など、一人もいない。彼女にしか出来ない仕事だ。
「不死川様の、怪我の状態は如何でしょうか? あの後、増やしてはいませんか?」