第16章 今が旬じゃなくても〜顕如〜
「顕如様、お願いしたいことがあります」
「なんだ?」
「…私を抱いて下さい」
私は正座をして頭を下げた。
そのまま、顔は上げられなかった。
上げなくても、顕如様が驚いているのは伝わる。
声も出ないのだろう…沈黙が長い。
私は、結局押し倒すのは断念してお願いをすることにした。
これが正しいとは、あまり思わないが…顕如様の気持ちも聞きたかったからだ。
「すまなかったな」
顕如様に謝られて、思わず顔を上げる。
「どうして謝るのですか?」
「葉月の気持ちに気づかなかったことが、悪かったと思ってな」
「それは…私とそういうことをする気になれなくて、じゃないですよね?」
「なぜ、そのようなことを」
「私、色っぽくないですし…」
「…此方へおいで」
私の手を取ると、顕如様の膝に座らされ、後ろから抱きしめられる。
「そんなことを思っていたとは…」
「だって、顕如様…全然私とそういうことしようとしないから」
「…して良かったのか?」
「もちろんです!」
そう言うと、背中からふっと笑う顕如様の吐息を感じた。
「言っておくが、葉月を大事にしていたのはわかって欲しい。…色気とかそういう問題ではない」
「それなら、良かったです。でも、残念ながら色気はないんです。胸も小さいですし」
「…では、確かめて良いのか?」
「えっ!」
私が驚いて飛び上がると、顕如様が笑う。
「悪かった、冗談だ」
「もう!顕如様の冗談は、冗談に聞こえません」
「あながち、冗談でもないのだがな…」
「えっ?……あっ」
後ろの首筋に唇の感触を感じ、私は思わず声を出してしまい、口を押さえた。
すると、その手を顕如様が優しく掴み、剥がした。
「声が聞こえないだろう」
囁くように言われ、身体が疼く。
「本当に良いのか?俺はタカが外れると厄介だぞ」
「いいんです。私、ずっとこうされたかったから」
「そうか…」
そう言って、唇が段々と下がっていった…
私が旬じゃなくなっても、味わってくれますよね。
顕如様なら、きっと。
でも、あわよくば旬の間に……