第16章 今が旬じゃなくても〜顕如〜
夜な夜な、二人の男たちは…
「お前の好みは昔から変わらないな。純粋そうで小さくて可愛い子が好きだったもんな」
「…何年前の話をしている」
信玄の軽い発言に、顕如は顔を背ける。
「天女のことも、大事にしてるみたいだな」
「放っておけ。話す気はない」
「まあ、可愛がるのと愛でるのは違うぞ?しっかり捕まえておくんだな」
「何が言いたいだ、お前は」
「あぁいう子は開発甲斐があるもんなぁ」
「……これだから嫌いなんだ、お前は」
ニヤニヤする信玄を見るのも嫌だと言うように、無視して酒を飲む顕如だった。
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私から押し倒すのはかなりハードルが高い気がする。
信玄様からのアドバイスを思い出し、一人赤くなったり、青くなったりしている私はなんだか間抜けだ。
誘うって…どうやって?
「まだ寝ていなかったのか」
顕如様が部屋に入って来て、まだ横になっていない私を見て驚く。
「信玄様は帰られたのですか?」
「あぁ。全く、あいつには困ったものだ。…急に悪かったな」
「いえ、仲が良くていいですね」
「…仲良くはない」
即答する顕如様に笑ってしまう。
「顕如様のこと、よく知ってるみたいでいつも羨ましいです」
「あいつとは腐れ縁だ。そういうのではない」
そう言いつつも、気兼ねない関係性を感じて私は微笑む。
信玄様と顕如様が軽口を叩き合っている姿は好きだ。
二人とも自然体で、昔ながらの仲を感じさせる。
そんな信玄様の助言だからこそ、余計に気になる。
今夜、私は頑張るしかなかった。