第15章 風の強い日はあなたと〜徳川家康〜
「やだ…やめて」
「その、やめては逆効果。…残念だったね」
家康がクスッと笑って私の髪を耳にかける。
「俺が触らないでって言ったの、なんでかわかる?」
耳元で囁かれ、私は身体が熱くなる。
わからない。
ドキドキして、全然わからない。
私は緊張で目を瞑る。
「ダメだよ。そんな顔したら…ほら、こっち向いて」
私の顎を持ち上げると、顔を近づける。
「答えはね、あんたといると、こういうことがしたくなるから」
そう言って、私の唇を食べるように口付けてくる。
「ちゃんと離れてあげていたのに、馬鹿だね…自分から飛び込んで来るなんて」
唇を離して囁くように呟く。
私は驚きと胸の高鳴りで声が出ない。
私の前に優しいだけじゃない家康がいる。
いつもの家康じゃない。
家康はもしかして、気付いていたの?私の気持ちに。
「これで、風の音が怖くなくなった?」
私がコクコクと頷くと、家康が薄く笑う。
「そう?良かった…」
そうして家康は、風のように私を攫っていった。
どこまでも遠くに連れて行って…。
あなたと一緒なら怖くないから。