第14章 一夜の過ち〜猿飛佐助〜
自室に戻るとカタッと上から音がした。
私は上を見上げて言う。
「佐助くん、来てるんでしょ?」
そう言った途端、上から佐助くんが降って来た。
私に跪き、深く頭を下げている。
「葉月さん、昨夜は…」
佐助くんが口を開くのと同時に私は先に「ごめん!」と言った。
「昨日は、私が悪いの。私が佐助くんに甘えちゃったから」
「葉月さん…」
「だから、気にしないで。お互い忘れよう」
「…忘れる?」
佐助くんの顔が曇り、眉間に皺が刻まれる。
「どうしてそんなことを?」
「佐助くんに後悔して欲しくないし」
私が佐助くんに背を向けようとすると、佐助くんは私の肩を掴んで無理矢理振り向かせる。
「俺のこと、好きじゃないの?」
「…え?」
「いや、幸村がそう言ってたから」
…幸村〜!
もう、余計なことを…っ。
佐助くんが余計に混乱しちゃうじゃない!
「じゃあ佐助くんは?」
「えっ?」
「佐助くんは私のこと、好き?」
私はちょっと意地悪く聞く。
絶対答えられないと思った。
佐助くん、恋愛関係は疎そうだもん。
一夜の過ちをただ後悔して、反省していたに違いない。
私は後悔もしたけれど、それと同じくらい嬉しかったんだから。
なのに、謝るなんて…悲しかった。
私としたことが過ちみたいで。
だから、もういい。
「好きじゃないでしょ?だから、忘れよう。お互いに」
私は冷静にそう言って終わらそうとした。
「いやだ、忘れない。忘れたくても忘れられない」
いつもより低い声で佐助くんが言い、私は驚く。
佐助くんの目に少し怒りが見える。
「俺は、好きな人とじゃなきゃしない」
そう言って、私に近寄ってくる。
「佐助くん…それって」
私はじりじりと追い詰められて、逃げられずに困惑する。
「そのままの意味だよ。君が好きだから」
あっさり答えられ、私は呆然とした。
「友達としてじゃなく?」
「そう、友達としてじゃなく」
「う、そだぁ」
「…信じられない?」
私は頷いた。