第13章 博愛主義のあなた〜武田信玄〜
佐助は走りながらハッとして、幸村を見る。
「さっき、さらっとご飯誘ってたよね?」
「まあな。あいつはみんなでって思ってそうだけどな」
「幸村…」
「なんだよ」
「邪魔して悪かった」
「本当にな」
幸村と佐助は走って去って行く。
そんな会話をしてるとは知らず、私は二人の姿を見送った。
さて、帰るか。
私は伸びをして、城に向かって歩き出した。
ふと、遠くに背の高い男性の後ろ姿が目の中に飛び込んで来る。
あ…あれ、信玄様だ。
声を掛けようか。
そう思いながら、その後ろ姿を小走りで追いかける。
でも、手前の角を曲がってしまい、行方を見失ってしまった。
「はぁ。居なくなっちゃった」
「誰かお探しかい?」
ドキッとして振り向くと、信玄様が立っていた。
「信玄様…」
「姫に会えるとは嬉しいな。今日の夜は一人なんだ。食事に付き合ってくれないかい?」
信玄様はいつも通りだった。
「君みたいな可愛い子とご飯が食べれたら、嬉しいんだが」
信玄様らしい誘い文句だ。
たとえお世辞でも、そう言われると嬉しい。
それが女心だと思う。
「はい…私で良かったら」
私もつい、そう答えてしまった。
信玄様の真意はいつもわからないのに。