第13章 博愛主義のあなた〜武田信玄〜
どうなんだろう。
好き…なのかな。
ただ、妙に気になったの。
誰にでも女性になら甘いあの人は、特別な相手にどんな顔を見せるか。
どう振る舞うか。
どうなってしまうのか…、
「ううん。ただ、聞いただけ」
「そっか…」
「じゃあさ」と幸村が言うので私は幸村を見た。
でも、幸村は黙ったまま何も言わない。
「え?何?」
私が聞くと、幸村の顔が赤くなっていく。
「俺と……」
そう言った時、佐助くんの声がした。
「おーい、幸村ー!」
「なっなんだよ」
幸村は、ちょっとあたふたしながら佐助くんに言った。
「えっ?来たらまずかった?」
「まずくないよ、ねえ?」
佐助くんが気まずそうに言うので、私が答えると
「おー、そうだよ!まずくなーよ、なんだよ」
半分ヤケクソになって幸村も答えた。
「ちょっと野暮用が出来た。予定より早く越後に帰ろう」
「はあ?なんで?」
「なんでも。謙信様が呼んでるから」
「マジかよ。信玄様は?」
「二、三日後くらいに帰るって。まだ視察があるらしい」
「…わかったよ」
くそっと言いながら、幸村は自分の髪をくしゃくしゃっとすると、
「じゃあ、またな。今度、飯でも行こうぜ」
私を見て早口で言った。
「うん、気をつけてね。佐助くんも」
「あぁ、また会おう。葉月さん」
二人は慌てて帰って行った。