第11章 見つめていたい〜明智光秀〜
私は手を止めて、そっと光秀さんの頭を撫でる。
「いつもありがとうございます」
大好きです…そう思いながら。
光秀さんのサラサラした髪を触り、寝顔を見て、私はまた苦しくなる。
これ以上好きになってはダメだ。
私の中でもう一人の私がそれを止めようとする。
部屋に戻ろう、そう思って立ち上がると…
「何処へ行く?」
光秀さんの声がした。
「俺は寝ていたのか?」
「はい、ちょっとだけですけど」
「疲れがとれた気がするな…」
光秀さんがゆっくりと起き上がる。
「自室に戻るのだろう?送っていく」
そう言って光秀さんは先を歩いて行く。
光秀さんは姿勢が良い。
後ろ姿を見ながら、ぼんやりそんなことを思った。
そっと着物の袖を掴む。
…離れてしまうのが寂しい。
「どうした?怖いのか?」
「ちょっとだけ」
「なら、自室に着くまで捕まっていろ」
そう言って振り向かずに歩いて行く。
私は一緒にこうやって廊下を歩くだけでも嬉しいなんて、どうかしてますよね。
わざわざ送ってくれる、あなたの優しさが嬉しくて苦しい。
あっという間に自室に着いてしまった。
もっと長い廊下なら良かったのに。
そう思わずにはいられなかった。
「今日は助かった。ありがとう」
真っ直ぐにお礼を言われ、私は驚いた。
こんなにストレートにお礼言うなんて…ずるい。
「いえ、また明日行っても良いですか?」
光秀さんは目を見開いて驚いた顔をすると、またすぐいつもの意地悪そうな顔にもどる。
「お前も相当暇なんだな。気が向いたら、で良い」
そう言うと、あやすように私を見た。
「おやすみ」
私の頭を撫でると、光秀さんは去って行った。