第11章 見つめていたい〜明智光秀〜
「あの、次は横になって貰えますか?」
「随分と大胆だな」
「ち、違います!背中から足にかけてやりたくて…」
「わかっている」
そう言って、また笑った。
私はむくれながらも、光秀さんが布団に横になってくれるとほっとした。
背骨の方から少しずつ下に下にずらしながら、ちょっとずつ圧をかけて押していく。
「ここは元気になるツボなんです」
「あぁ…いい気持ちだ。毎日やって貰いたくなるな」
「毎日やりましょうか?!」
私が食いついて答えると、光秀さんが苦笑した。
「俺にそんなことを毎日しても、お前に何の得もないだろう?」
…わかってないですね。
得しかありませんよ。
あなたが元気になってくれたら、私はそれで良いのです。
こうして一緒にいられるだけで本当に幸せなんですよ、私。
「お前も俺に乗っかって、よく平気だな。襲われるとは思わないのか?」
それこそ、あなたに何の得もありません。
私に手を出したら、後々面倒くさいのは私でもわかります。
一時の欲で私を抱くほど、あなたは浅はかな人じゃない。
頭も良く、先の見通しが出来るあなたはそんなことはしない。
わかってるんです。
「思いませんよ。光秀さんを信頼していますから」
「お前ぐらいだな。俺を信頼してるなんて言うやつは」
「そんなこと、ないですよ。みんな口に出さないだけです」
そう言いながら、腰をマッサージする。
圧をかけると、少し凝りを感じた。
「腰が凝ってますね。…遊び過ぎです」
私がちょっと揶揄いを込めて言うと、光秀さんが笑った。
「昨夜、激しくやり過ぎたかもな」
その瞬間、私が固まって手が止まる。
「…冗談だ」
そう言って、光秀さんは声を出して笑った。
私はリラックスした様子の光秀さんを見て、安心する。
今日の私は役に立っている気がした。
「ところで、お前はいつまでやるつもりだ?」
「光秀さんが寝るまでです」
「そうか、なら朝までやってもらうことになるぞ?」
「えっ!」
私が驚くと、光秀さんがまた笑った。
マッサージしているのは私なのに、私の方が元気を貰っている気がした。
光秀さんとこうやって他愛ない話をするのが楽しい。
暫くやっていると、光秀さんから寝息が聞こえてきた。
あ、寝てる…。
やっぱり疲れていたんだわ。
少しは疲れが取れただろうか。