第11章 見つめていたい〜明智光秀〜
「はい!任せて下さい」
私は嬉しくなり、満遍の笑みで返事をした。
すると、ちょっとほっとしたように光秀さんが薄く笑う。
この人は…また私を気遣っているのかもしれない。
私の好意を無下に出来ないのだろう。
光秀さんは…やっぱり優しい。
言葉足らずなこの人は、行動がいつも優しいのだ。
私は部屋に入れて貰った。
殺風景な部屋だけれど、光秀さんの香りがして落ち着く。
そして、やっぱりドキドキした。
光秀さんを感じて。
「さて、どうしたら良い?」
「あ、後ろ向きに座って貰えますか?」
そう言うと、光秀さんは素直に後ろを向いた。
可愛い。
私の言う通りにするなんて。
私は嬉しくなり、笑みが隠せない。
「…どうした?」
光秀さんがちょっと振り向く。
「いえ!なんでもありません。では、失礼します」
私はそっと光秀さんの肩を両手で触る。
あ…硬い。
細身だが、しっかりと筋肉があるのを感じる。
私…今、光秀さん触り放題?!
この状況を理解して、私はハッとした。
これは…私が得なやつじゃないか。
光秀さん、すみません。
邪な気持ちでやってしまって。
しっかり、疲れがとれるように頑張りますから!
私は気を取り直して、光秀さんの腕に触れた。
「あの…」
「なんだ?」
「古傷、とかありますか?触られたら痛い場所とかあれば、そこはやらないので教えて下さい」
「古傷なら何ヶ所かあるが…」
「痛い所は?」
「いや、特にない」
「そうですか…?」
私は不安になり、黙る。
この人は痛い場所があっても言わなそうだし、どうしよう。
「なんだ?脱いだ方がやりやすいか?」
「やめて下さい。目のやり場に困って逆にやりにくいです」
私が全力で断ると、光秀さんがくっくっくっと笑う。
あ!今、からかわれたんだ。
本気で返した私が馬鹿みたいだ…。