第10章 続・銀杏並木でつかまえて〜上杉謙信〜
謙信様の言っている意味がわかり、私は身体が熱くなる。
急に恥ずかしくなり、俯いた。
「どうした」
「い、いえ…」
「せっかく来たんだ。顔を見せろ」
う…。
朝からそんなに色っぽいんですか?
心臓に悪いです…。
「は、恥ずかしいですし」
「恥ずかしい?これからもっと恥ずかしいことをするのに、か?」
な、な、な…。
謙信様の綺麗な唇からそんな卑猥な。
私は口がぱくぱくしてしまう。
「で、でも…謙信様と私は付き合っているわけじゃないし」
「付き合ってる?」
「あ、いえ…恋仲じゃない、ですし」
しどろもどろの私を見て、謙信様は眉を顰めた。
「何を言っている。俺はお前を嫁にするつもりで此処に連れて来たつもりだ」
「え!そうだったんですか?」
私が安土城で虐げられていると勘違いして、連れて来たんじゃなかったんだ…。
「当たり前だ。ではければ、わざわざ連れて帰らん」
「あれ?でも、みんなにも安土城で辛そうだったからって」
「お前に先に伝えるのが筋だろう。彼奴らに言う必要はない」
…そうなのだろうか。
みんなも勘違いしてそうだけどな。
「これで問題ないか」
「あ、私で本当に良いのでしょうか…」
謙信様の顔がどんどん近づいて来て、私はもうどうすれば良いかわからなかった。
「葉月が良い。それ以外はいらん」
「…謙信様」
「やっと、お前に触れられるな」
そう言って、優しく唇を重ねる。
日が出て来て、謙信様の顔がはっきりと見えて来た。
「あ、あの。明るくなって来たので。私はこの辺で」
「…何を言っている。好都合だ」
布団から出ようとする私を腕の中に閉じ込める。
「お前の姿がよく見えるじゃないか」
「や、やです」
「いや?」
「無理です。寝起きですし…」
「何も問題はない。お前はいつでも美しい」
私より百倍綺麗な人に言われても説得力ありません。
でも、そんな風に見つめられたら…私も何も考えられない。
「あっ、謙信様…」
「大丈夫だ。此方をしっかり見ろ」
私の頬を優しく撫で、謙信様は目を細める。
そんなうっとりと私を見ないで…
「朝からお前を抱けるとは、幸せだな…」
そう言って私に覆い被さった。