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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第9章 銀杏並木でつかまえて〜上杉謙信〜



「あの…逢いたかったです。お礼がしたくて」
「お礼?」
「はい、元気になれたお礼を」
「礼…か。では、頂こうか」

そう言うと、私の手を取り、ゆっくりと自分の口元に持っていく。
そして、そっと私の手の甲に唇を落とした。
私は驚きで固まってしまう。
こんなことするなんて。
しかも、この人はそういうのが似合いすぎる。
イケメン過ぎて、辛い…。

紅葉のように真っ赤になっている私を見て、満足そうに微笑むその人は、思っていた以上の方だった。
やっていることが紳士的で、かっこ良すぎる。
私の心臓、持つかな?

「謙信様ー!」
遠くから佐助くんが走ってくるのが見えた。

「あれ?葉月さん?」
佐助くんが来ると、急に甘い雰囲気は消え、ピリッとした空気になる。

「佐助、なぜ名を知っている?」
「いや、この人は前に話した僕の同郷…ちょっと刀閉まって下さいよ」
「え?佐助くん、この方とお知り合い?」
「…まさかだと思いたいが、君が探していたあのナイスガイって」
私は小刻みに頷いて返事をする。
「…いや、やっぱりそうだったのか。謙信様が女性に優しくするなんて驚きだ」
うそ…ということは…まさか…。
「もしかして…貴方のお名前は」
私は恐る恐る聞く。

「上杉謙信だが」
やっぱり!だから気品があったのですね!
「…葉月さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
いや、大丈夫じゃない。
私は安土城の人間だ。
敵国の人達とこんな風に会って大丈夫なわけ、ない。
光秀さん辺りに見つかったら、私、拷問されたりするのだろうか。
牢屋行き?!ど、どうしよう…。

「佐助、お前何を言ったんだ。真っ青になってしまったじゃないか」
「謙信様、葉月さんは安土城で暮らしているんですよ」
「何?!」
「…知らなかったんですか」
佐助くんは、呆れて謙信様を見ると参ったな…と呟いた。
謙信様は暫く何かを考えていた様子だったが、急に顔を上げて佐助くんを見た。

「佐助、帰るぞ」
「はい、宿に帰りますか?」
「いや、越後に、だ。その娘も連れて行け」
「え?!私?」
「…言うと思った。本気ですか?」
「此処じゃゆっくり話せんだろう。早くしろ」
「あの…」
「ごめん、こうなったら誰も止められないんだ。諦めて」



…まさか、こんなことになるなんて。
三成くんとの約束が守れなくなってしまった。



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