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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第9章 銀杏並木でつかまえて〜上杉謙信〜


三成くんと城まで歩く。
いつもなら怖い人とすれ違う時は、肩に力が入ってしまう。
でも、隣に三成くんがいるだけで心強かった。
安心する…三成くんが横にいると。

ちょっと三成くんの顔を見る。
すぐに三成くんは気づいて、こちらを向いた。

「どうかなさいましたか?」
三成くんは何も聞かない。
私が毎日城下に来ている理由を。
優しいのかな。
そもそも、興味がないのかもしれないな…私に。

「ううん。三成くんに想って貰える人は幸せだろうなって思ってね」
そう思っていたのも事実だ。
こんな風に心配してくれて、すぐに来てくれたら嬉しいと思う。
私は、城の人間だから優しくしてくれるけれど、それでもとっても嬉しいもの。
ちょっと羨ましい。

「そうでしょうか…。
 幸せそうには見えませんが」
「そういう人、いるの?」
驚いた。気づかなかった。
三成くんに恋仲がいたなんて。
三成くんは私が驚いた顔をしているのを見ると、クスッと大人っぽい微笑みをした。

「…気になりますか?」
「うん、気になる」
「そうですか…なら、良かったです」
「…?」
「葉月様は、
 私に興味がないのかと思っていたので」
え?何でそう思ったんだろう…。
「私、感じ悪かった?」
「いえいえ、そんなことは一度もないですよ」

「もしかして葉月様も、私が興味がないから何も聞かないとお思いで?」
「え…うん。違うの?」
三成くんは、少し哀しみの色のする瞳で私を見た。
「違いますよ。
 聞かないのではなく、聞けないのです」
そうして、薄く笑うのだった。

なんで?
そう聞きたかったけれど、聞けなかった。
秀吉さんが城の前で待っていたのだ。

「お前…。やっと帰って来たか。三成、悪かったな」
「いえ、遅くなり申し訳ありません」
小走りで駆け寄ってくれた秀吉さんを見て、反省した。
「ごめんなさい…」
秀吉さんは、私の頭に手を乗せるとちょっと呆れたように、でも安心したように笑う。
「もう日が暮れると寒くなる。早く中に入れ」
私は中に入った。

「あいつの様子は?誰かと会っていたのか?」
「いいえ、一人でした」
「…そうか」
「一体、あいつは毎日何を待っているんだ?」
そう二人が話しているのも気づかず…。



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