第1章 朝が来るまで待って 〜明智光秀〜
気の利いた会話も出来ないだろう。
でも、それでも構わなかった。
全身でこの時間に浸っていたのだ。
こういう時ほど時が経つのは早くて…私はすぐに眠たくなってしまった。
顔が熱い。
完全に酔っ払いだ。
「どうした?もう眠いか?
顔が真っ赤だな」
「はい。光秀さんは…全く変わらないですね」
「まあな。酒には酔ったことがない」
「すごいです…」
そう言う私を見て、目を細めて笑った。
「先に寝ていろ」
「え?」
「明朝、送らせる。もう休め」
「…はい」
身体は疲れていなかったけれど、心がクタクタだった。
横になると身体がだんだん重くなり、瞼が閉じていく。
お酒のおかげで眠れそうだ。
良かった、緊張して一睡も出来ないかと思ったから。
ふう…と息を吐いて、布団を深く被った。
次に目を覚ました時は暗闇だった。
夜中かな?
喉が渇いた…。
横を向くと隣の布団で光秀さんが眠っていた。
光秀さんだ。
光秀さんが寝ている!
寝顔も綺麗…なんなら無防備で可愛いくらいだ。
本人に伝えたら怒られるだろうから言えないけれど、しっかり目に焼き付けておこう。
光秀さんが寝ている所など、決して見れないのだから。
ふらふらと立ち上がり、水を飲むと、もう雨はすっかり止んでいて綺麗な月が見えた。
お月様、素敵な時間をありがとうございます。私は幸せです。
そう心の中でお礼を言った。
布団に戻ろうとすると、光秀さんが無言で自分の布団を広げ、私を誘った。
起きていたの?
それとも起きたの?
私は誘われるがまま、静かに光秀さんの布団に入った。
抱きすくめられる格好で横になると、背中越しに寝息を感じた。
寝ぼけている?
私を大きなねいぐるみにでも思っているのだろうか。
それとも、女性とはいつもこう寝ているのだろうか…。
胸が痛くなる。
この人は本当に。
寝ていても起きていても何を考えているかわからない。
これで私はもう一睡もできないじゃないか。