第86章 悩ましい人〜豊臣秀吉・明智光秀〜
「…これで、わかったか?」
光秀さんの言葉に私は首を振った。
「全然わかりません。また揶揄っているんですか?私のこと」
「そう思うか?…本当に?」
「だって、光秀さんは私のこと揶揄ってばかりだもん。この間だって…」
「この間のことも?お前は俺のことも信用してないのか」
くっと自虐的に笑うと、まあ仕方ないなと光秀さんは言った。
日頃の行いがものをいうな、と。
「だが、これは戯れではない。残念だったな」
「戯れじゃないのに、こんなことする理由なんて…」
「そう。一つしかないな。やっとわかったか?」
まさか、信じられない。
急に頬が熱くなっていく。
だって、光秀さん私に興味なさそうだったのに。
光秀さんからの想いに、私は恥ずかしくなる。
「おい。なぜ、今更顔を赤くするんだ」
「だって、光秀さんが私のこと…だなんて、信じられなくて」
くっくくく…
光秀さんは笑い出し、「口付けよりもそちらの方に驚くとは、お前は本当に面白い」と肩を震わせて言った。
失礼な。
だって、光秀さんみたいな人が私に構う理由なんてわからなかったんだもの。
仕方ないじゃない。
「なら、自覚した後にするか?もう一度」
いたずらっぽく笑うと、光秀さんは私の頬にそっと手を添えた。
「強引に進めて悪かった。次はもっと優しくしてやろう」
そう言いながら、また顔を近づけてくる。