第86章 悩ましい人〜豊臣秀吉・明智光秀〜
「今にも手を出されそうだったろう?違うとは言わせないぞ」
かぁっと耳まで熱くなる。
確かに光秀さんが入って来なかったら、どうなっていたかわからない。
だって、どうなっても良いと思っていたもの。私が。
「…だって…私…」
「好いた男になら、何をされても良い…か?そもそもお前、本当に秀吉が好きなのか?」
「なんで、そんなこと…」
「お前は優しくされて、そう思い込んでいただけじゃないのか?」
「ちが…違います!ひどいです。そんなっ!」
「葉月、大きな声を出すな。落ち着け」
「意地悪です、光秀さん。そんな酷いこと言うなんて」
光秀さんからの言葉、嬉しかったのに。私のことなんて眼中にないと思っていた光秀さんが、私のこと気にかけてくれたのが。
すごく嬉しかったのに。
「仮にそうだとしても…光秀さんに関係ありませんよね。私がどうなろうと」
「関係あるな」
ぐいっと近くに寄ると、光秀さんはまた私の手を掴んだ。
「こちらに来い」
「や…っ、光秀さん!」
光秀さんは私を自室に入れると、強引に口づけた。
驚きと混乱で、されるがままの私は光秀さんからの口づけを受け入れてしまう。
「ん…っ!んっ」
光秀さんが私の頭を押さえているから、唇から逃げれない。
何度も角度を変えて交わされる口付けに、力が抜けていく。
なんで?
なんでキスされてるの?
そう思うのに、抵抗できない。
やがて、光秀さんはゆっくりと唇を離した。