第83章 涙色のままで〜明智光秀〜
光秀さんはその眼を強く輝かせて、絡め取るようにじっと私を見ていた…が、ふと眼を伏せた。
「…冗談だ。戯れが過ぎたな」
やっぱり、冗談?
どこから…どこまでが冗談?
「……は、はい」
混乱しながら私が答えると、光秀さんがそっと私のおでこに柔らかく口づけた。
「元気の出るまじないだ。またいつでも来い。泣きむし娘」
涙の跡が乾いて頬が突っ張る。
光秀さんの色のない瞳を見ながら、彼と深く関わったことを後悔した。
後悔しながらも、彼に触れて、そして触れて貰ったことにどうしようもない喜びを感じてしまう。
彼のこの綺麗な瞳の先に、深みに引きずり込まれ、骨抜きにされてしまう自分が見えた。
そんな気がした…。