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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第83章 涙色のままで〜明智光秀〜



「…そうか。色恋類いの悩みかと思ったが。違ったようだな」
「すみません」
「いや?それだけ真剣に取り組んでいる証だ。仕事なんて、一朝一夕にはいかないものだからな」
「光秀さんにもそんなこと、あったんですか?」
「お前のように素直に泣いたり傷ついたりはしなかったがな。上手くいかないことの方が多いものだ…始めはな」
「……そう、でしたか」
「意外か?俺も一応、人間なんだが」
「わかってますよ、そんなこと」
「一生懸命だからこそ、悔しい気持ちが芽生えるのだろう。お前らしい、まっすぐな感情だ。眩しいくらいにな」

そう言って、光秀さんは私の頭をひと撫でした。

「ー…肝心なことは話さない所もお前らしい」
「え?何か言いました?」

光秀さんが何か小さい声で呟き、それが聞こえず首を傾げる私の髪をすくいながらおかしそうに笑って言った。

「…だが、不思議だな」
「何がですか?」
「なぜ、わざわざ俺の御殿まで来た?今日は安土城に他の奴らもいただろう?相談相手なら他にもいたはずだ」
「それは…」
「葉月は、俺に慰めて貰いたかったのか?」

かっと頬が熱くなる。
私はうつむくしかなかった。
別に慰めて貰いたかったわけじゃない。
でも…優しくされたいと思った。
光秀さんに。
光秀さんだけに。

悲しみで心がいっぱいになった時、光秀さんの顔が見たくなった。
もし光秀さんに抱きしめて貰えたらって。
力いっぱい、ぎゅっ…って。
あの腕にかっさられたいって。
そんなことは一度もされたことないのに、願ってしまった。

そんなことを想っていたら、光秀さんの御殿まで来ていた。
足が勝手にここまで動かしたの。


「……もし…」
「ん?」
「もし…そうだって言ったら?」

すると光秀さんは、ちょっと眉を上げて、私を見た。

「そうだな…」

私に一歩近づき、手を広げた。

「こうする」

瞬間、ふわっと光秀さんに包まれた。
優しく抱きしめられていると気づくまで、やや間があった。
たぶん、現実だと思えなかったんだ。

光秀さんをこんなに近くに感じたことなかったから…。

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