第79章 満月には、ありのままの気持ちを…〜明智光秀〜
「……いったぁ…く、ない。あっ!光秀さんっ」
「大丈夫か?葉月」
「光秀さん、私を庇ってくれたんですか?」
「…気にするな。怪我はないか?」
「はい。ありがとうございます。…光秀さんは?」
「平気だ」
飛び上がり過ぎて足を滑らせた私は、光秀さんに咄嗟に庇って貰ったようだ。
目を開けると、光秀さんを下敷きにして倒れていた。
「ごめんなさい。痛かったでしょう?」
私は顔を近づけ、光秀さんの頭を触って確かめた。
ぶつけたりしなかっただろうか?
暫く、黙って私にされるがままになっていた光秀さんが静かに口を開いた。
「…葉月」
「はい?」
「……お前、この状況を理解しているか?」
「この状況?」
「このままでいたいなら、俺は構わないが」
「あっ!ごめんなさい…っ」
私ったら。
ずっと光秀さんに覆い被さったままだった。
「すみません…私」
何やっているんだろう。
恥ずかしい。
顔が赤くなってくるのを感じて、すぐに離れようとしたら、急に光秀さんの手が伸びて、私の腰を掴んだ。
私はまた、光秀さんの上から動けなくなる。
「……み、光秀さん」
「離れろ、という意味で言ったわけではない」
「…おかしいですよ、このままなんて」
「そんなに恥ずかしがるな。またいじめたくなる」
「い、いじめないで下さい」
目を逸らしたまま、そう言うしかなかった。
こんなに光秀さんと近づいたことはない。
どうしたら良いか、本当にわからなかった。
これを面白がっている光秀さんの思考は、私には理解できない。
でも、私が意識したら光秀さんが離してくれないのなら、普通に接するしかない。
いやいや、そんなの無理だ……っ!