第79章 満月には、ありのままの気持ちを…〜明智光秀〜
「お返事、待ってますね」
「…返事が欲しいのか?」
「もちろんです!…あ、でも忙しかったら別に平気ですから。貰えたら嬉しいな…なんて、思ってるだけで」
私が慌てて両手を振って否定すると、光秀さんはふっと笑い、仕方ないなというように私を見た。
まるで先生と生徒のような空気感。
そこには甘い雰囲気などはない。
それでもいい。
だって、あなたからの手紙が欲しいんだもん。
手紙の返事が欲しくて書いた…なんて言ったら、もっと呆れてしまうだろうか。
律儀な光秀さんは、手紙を貰ったら誰に対しても返事を書くという噂を聞いたことがあったから…。
期待半分。
どんな内容でもいい。
私に当てて書いてくれるなら…。
『葉月へ』
そう書いてくれたら。
ずっとずっと大切にする。
家宝にするんだ。
それがあれば、どんな辛いことがあっても元気を貰えるだろう。
それくらい、私にとって光秀さんは大きい存在になりつつある。
隠しきれないくらいに、大切な存在に…。
光秀さんは優しいから、どんなに忙しくなっても時間がかかったとしても、いつか返事をくれるだろう。
私はそれがわかるくらいには、あなたのことをもう知っている。
「……いつになってもいいですから。光秀さんの手紙、私も欲しいんです」
そう私がひとりごとのように言うと、光秀さんはスッと私の横を通りすぎながらこう言った。
「考えておこう。これは有り難く貰っておく」…と。