• テキストサイズ

イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第76章 君が嫌いな君が好き〜蘭丸〜



私は、悲しくなるくらい自分が嫌になった。


「なんでもない」
「…そう?」
「うん、ごめん」
「ふふっ。なんで謝るの?」
「癖…かな」
「じゃあ、すぐ落ち込んじゃうのも…葉月様の癖?」

あ…と言葉を飲み込むと、私は蘭丸くんをちらっと見た。
ふっと柔らかく瞳を揺らし、蘭丸くんは優しく笑いかけてくれた。

「違った?」
「違わない。どうしてわかるの?」
「わかりやすいもん、葉月様」
「そうかな」
「もし、欲しい言葉があるなら…俺が言おうか?葉月様が元気になるように」

私が黙ると、クスッと笑って蘭丸くんは首を傾げて覗き込んだ。

「俺は言えるよ、葉月様が喜ぶようなこと」
「蘭丸くんってどうしてそんなに優しいの?」
「別に誰にでも優しくはないよ。葉月様は特別」
「…特別?」
「だって、好きだし」

あまりにあっさりと『好き』と言われ、どの種類の好きかわからなくなる。
でも、それでも蘭丸くんに言われた『好き』が嬉しくて、心がじんわりと温かくなっていった。

「ありがとう…」

そう答えると、蘭丸くんはクスクスと笑い出した。

「葉月様らしいなぁ。好きに御礼で返すなんて」
「…変だった?」
「ううん。そんな所も好きだよ」
「そんな…。私なんて……」

否定の言葉を口にしようと、蘭丸くんの人差し指が私の唇に当てられ優しく止められた。

「…葉月様、落ち込んだ時は俺を呼んで。こうやって、いつでも飛んでくるから」
「いつでも…?」

私なんかのために?

「今、私なんかの為にって思ったでしょ?」
「あ…。どうしてわかったの?」
「もう。さっき言ったでしょ?」

ー…好きだからわかるんだよ。

そう囁いて、私の耳に軽くキスをくれた。

「自分を嫌いでもいいよ。そんな君が、俺は好きだから」

私の手を掴むと、「行こう、葉月様」と引いて歩こうとする。

「何処へ…?」
「さあ、何処へ行こうか」


蘭丸くんは悪戯っぽくそう言って、私を暗闇に誘っていく。
私は導かれるように歩き出した。
私の心ごと掴んだ、蘭丸くんの言われるままに。

そう、誰もいない場所へ……。



/ 462ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp